SAVE THE CATの法則 本当に売れる脚本術 -その1-

「SAVE THE CAT」という本について書いてみる。

毎週1本は映画か舞台を見ているが、この本を読んでから映画を見る目が変わったので紹介したい。

 

books.rakuten.co.jp

 

映画という名の旅を一緒に続ける主人公に共感出来るかどうか

映画という名の旅を一緒に続ける主人公に共感出来るかどうか。これが観客をストーリーに引き込むための最も重要な要素だ。

 

私たちは映画業界で大手映画会社に脚本を売り、大勢の観客を虜にしたくて日々努力している。もちろんヒット作を作りたい。できたら続編も!この業界で勝負するのなら、ホームランを狙うのが当たり前だ。インディーズも好きだが、どうせヒットを打つなら、大手映画会社というスタジアムからヒットを打ちたい。つまり本書は、メジャーな市場でヒットを飛ばしたい脚本家のためのものなのだ。

 これが本書のイントロダクションだ。上記にもあるように、本書は"実際に脚本を書いて売った経験がある人間"が実体験に基いて書いた本なのだ。今回はその中でも大きな学びとなったことをいくつか紹介する。

 

映画の全てを語る「どんな映画なの?」

 「どんな映画なの?」こそが勝負を握る鍵である。

  • プロデューサーや脚本家は、映画会社の重役室で自分の素晴らしいアイデアを必死に売り込む。
  • エージェントは、担当する脚本家が書いた脚本の中から、週末に読んで気に入った作品を電話で説明する。
  • 映画会社の重役は、この夏公開する映画のポスターについて宣伝部の連中と話し合う。

 このように、ハリウッドのいたるところで、売る側も買う側も必死に1つの質問に答えようとしている。「どんな映画なの?」と。もし答えられなかっったら...それで終わりなのだ。

 

 これは他のエンタメでも同じだと思う。例えばゲームであったら、「どんなゲームなの?」「何が面白いゲームなの?」「何で勝負するゲームなの?」という問いには簡潔に答えられなければならない。クリエイターたちがものづくりをする時の「指針になるもの」であり、「プロジェクトが迷走した時に戻る場所」だからだ。開発後期になるにつれて、この部分がブレてくるプロジェクトはだいたい失敗するという話は有名な話だ。

 

わずか一行で書く最高のログライン

 どうしたら質が高く、売れる脚本を書くことが出来るか。それは、「どんな映画なの?」という問いに一行で答えることだ。これをハリウッドではログラインと呼ぶ。

 

 脚本家は自分がいない場所でも赤の他人(エージェント、プロデューサー、映画会社の重役、観客すべて)をワクワクさせて、脚本を読んでもらうことが必要だ。なぜなら、全ての場所に自分で赴いて説明することなど不可能だからだ。

 

 では、良いログラインとは何か?答えはシンプル。「なんで俺はこれを思いつかなかったんだろう!?うーん、やるなあ」と思うもの。実例は以下だ。

  • 新婚ホヤホヤのカップルが、離婚した親(計四人)のもとでクリスマスを過ごすことに・・・。『フォー・クリスマス』(08)
  • 入社したての新入社員が週末に会社の研修に行くが、なぜか命を狙われる。『The Retreat』
  • 超安全志向の教師が理想の美女と結婚することになるが、その前に将来の義理の兄(警官)と最悪の相乗りをする羽目になる!!

 

 これらのログラインには共通の4つの要素が含まれている。

1. 皮肉はあるか?
 伝わりにくいと思うので、作中の例を引用する。


 - 警官が別居中の妻に会いに来るが、妻の勤める会社のビルがテロリストに乗っ取られる
 - 週末の楽しみに雇ったコールガールに、ビジネスマンは本気で恋してしまう
 - クリスマスという一家団欒の祝日のはずが、皮肉な状況になってしまう
 - 新入社員が入社したての会社で歓迎されるどころか、命をねらわれるはめになる

 上記を翻訳すると、「せっかく●●なのに、皮肉にも▲▲の状態になってしまう」となると考える。確かに皮肉がある方が、結末が気になってしまう。また、毎週映画を見る毎にログラインを作っているのだが、先月見た「スプリット」は、皮肉がある良いログラインが出来た。

 

「突然監禁される3人の少女。しかし、犯人は23人格を持った狂人だった...!」

 

 どうだろう?知らなかった人も若干の興味が出たのではないだろうか?(23人格というワードがパンチが強すぎるのもあるし、私がシャマラン監督好きなので贔屓しているだけなのかもしれない。)

split-movie.jp

 

2. イメージの広がり

 ログラインを聞いた時に、心の中にパッと魅力的なイメージが浮かぶだろうか。映画の時間の長さをはじめ、映画全体がなんとなく想像出来るだろうか?

 

3. 観客層と制作費

 脚本のバイヤーが利益を予想出来るよう、作品の雰囲気、ターゲット層などが示されているか?

 

4. パンチの効いたタイトル

 ログラインのパンチを強めるには、絶妙なタイトルが必要だ。「どんな映画なの?」が明確に効果的に表れているタイトルがなくてはならない。

 

 ログラインだけで終わってしまった。本当なら、映画は10個のジャンルに分けられる話と脚本は15個のパートに分けられるという話もしたかった。想像したよりも書いてしまったので、それはまた別の機会に。

 

 私は1年間見た映画から、ログラインの作成、ジャンルの選定、脚本のパート毎のストーリー概要をまとめてきた。その結果、「映画のお作法」が理解出来るようになった。おかげで簡単なシナリオプロットも書けるようになった(気がする)。なので、少しでも興味がある方はこの本を読むことをおすすめしたい。